「適応障害で辞めたこと、転職先に言うべきなんだろうか。」
転職活動を始めたとき、わたしもこの疑問にぶつかりました。結論から言うと、わたしは転職先に一度も伝えていません。それから10年、転職先で働き続けています。
この記事では、適応障害を転職先に言わなかった理由と、そのとき調べた法律上の位置づけ、そして「バレるのではないか」という不安について、わたしの体験も交えてまとめます。
- 適応障害を転職先に伝える法律上の告知義務はあるか
- わたしが適応障害を転職先に言わなかった理由
- 適応障害の既往が転職先にバレることはあるのか
- 伝えないことのデメリットと備え
- 転職後に再発しないためにやったこと
適応障害を転職先に伝える告知義務はあるのか
まず気になるのが、法律上どうなっているかです。ここははっきりさせておきたいところ。
原則、自分から申告する義務はない
厚生労働省が示す「公正な採用選考の基本」では、健康状態や病歴は本人の適性・能力と直接関係のない情報とされ、企業側が採用選考でこれを尋ねることは原則不適切とされています。
応募者の側から、既往歴を自主的に申告する法律上の義務もありません。言わなかったからといって、それ自体が違法になることはないということです。
「言わない」と「聞かれて嘘をつく」は別の話
ここは混同しやすいので分けて整理します。自分から言わないことと、直接聞かれて嘘の回答をすることは、法的な扱いが違います。
採用面接で既往歴を直接尋ねられ、それに対して虚偽の回答をした場合は、判例上、懲戒事由に該当し得るとされています。健康診断書の提出が必須の職種(運転業務・医療職など)や、応募書類で既往歴を明示的に問われた場合も同様です。
つまり「聞かれなかったから言わなかった」と「聞かれたのに嘘をついた」はまったく別物だということです。この違いを踏まえたうえで、次はわたし自身がどう考えたかをお話しします。
わたしが適応障害を転職先に言わなかった理由
法律上は言わなくてよい。とはいえ、実際にどう判断したかをお話しします。
原因は業務適性ではなく、環境だった
わたしが適応障害になったのは、直属の上司から学歴を理由に日常的に見下されていたことが原因でした。仕事の内容についていけなかったわけでも、能力が足りなかったわけでもありません。
原因が「その職場・その人」に紐づいていたので、環境を変えれば再発しないだろうという見立てがありました。だからこそ、転職先に伝える必要性を感じなかったというのが正直なところです。
転職の時点で、症状はほぼ回復していた
退職してから1ヶ月ほどで気力が戻り、転職活動を始めたのはそのあとです。面接を受けていた時点で、涙が止まらない・体が動かないといった症状はほぼありませんでした。
今まさに通院・服薬が必要な状態と、すでに回復して次の一歩を踏み出せる状態とでは、判断が変わって当然だと思います。適応障害から転職して10年にも当時の回復の経過を詳しく書いています。
適応障害の既往が転職先にバレることはあるのか
言わなかったとして、後から知られてしまうことはないのか。ここが一番気になる方も多いと思うので、経路ごとに確認しておきます。
傷病手当金を受給していても、転職先には伝わらない
療養中に傷病手当金を受け取っていた方は特に気になるところだと思いますが、受給歴が自動的に転職先へ伝わる仕組みはありません。
- 源泉徴収票:傷病手当金は非課税所得のため記載されない
- 住民税:非課税のため税額から推測される可能性もほぼない
- 健康保険:転職時に加入する新しい保険に、前職の受給歴は自動連携されない
- マイナンバー:情報連携は法律で定められた範囲のみで、勤務先が受給歴を閲覧できる仕組みではない
例外として、同じ傷病で転職後に再び傷病手当金を受給する場合は、保険者どうしで通算確認の照会が行われることがあります。ただしこれは本人の同意を前提とした事務手続きであり、転職先の会社に通知される仕組みではありません。
前職への在籍確認から漏れることも、基本的にない
転職先が前職に在籍確認をすることはありますが、個人情報保護の観点から、退職理由や病歴まで前職の会社が話すことは想定されていません。
調べた範囲で、実際に知られてしまうケースのほとんどは自分から話してしまった場合でした。制度上のルートから漏れる心配より、雑談の中でうっかり話してしまうことの方に気をつける必要がありそうです。
適応障害を伝えないことのデメリットと備え
言わない選択にはメリットもありますが、正直にデメリットも書いておきます。
配慮を求めにくくなる
伝えていない以上、「通院のため半休が必要」「繁忙期は特に負荷をかけないでほしい」といった配慮を、会社側から自然に得ることは期待できません。必要であれば、病名を出さずに「通院で月1回、午後から出社したい」のように、対応してほしい内容だけを伝える形で調整するしかありません。
再発したときに、事情を理解してもらいにくい
万が一、転職後に体調を崩した場合、周囲は「急に」としか受け取れません。言わない選択をするなら、再発したときにどう動くかも、自分の中である程度決めておくと安心です。
わたしの場合は「症状が出たらすぐ心療内科を受診する」という一点だけを決めていました。会社に伝えるかどうかは、そのときの状況次第でいいと思っています。
適応障害の転職後、再発しないためにやったこと
伝えない代わりに、自分の側で気をつけたことがあります。
「同じ環境を選ばない」ことだけを基準にした
業種や職種を選ぶとき、条件をあれこれ増やすと収拾がつかなくなります。わたしが唯一こだわったのは、院卒という肩書きを前面に出さず、人と関わる仕事に就くことでした。
学歴を理由にしたハラスメントが原因だったので、同じ火種を持ち込まないという一点だけを軸にしました。
10年、再発しなかった実感
転職して10年、あの頃のような涙は一粒もこぼしていません。伝えなかったことを後悔したことも、今のところありません。
とはいえ、これはわたし一人の結果です。原因や職場環境は人それぞれなので、「言わなくても大丈夫」と一般化するつもりはありません。9ヶ月で辞めた私が伝えたいこともあわせて読んでいただけると、判断材料が増えると思います。
適応障害の転職でよくある疑問Q&A
Q1. 面接で「病気をしたことはありますか」と聞かれたら?
正直に答えるか、「体調を整えるために一度立ち止まった時期がありました」と事実の範囲で答えるかは、自分で選べます。ただし明確に既往歴を尋ねられて虚偽の回答をすることは避けた方が安全です。病名を出さずに、事実に反しない範囲で答えることをおすすめします。
Q2. 転職先で健康診断書の提出を求められたら?
運転業務や医療職など、法令や社内規定で健康診断書の提出が必須の職種があります。その場合は指示に従って提出してください。一般事務などでは求められないことがほとんどです。
Q3. 転職後に体調を崩したら、どうすればいいですか?
まずは心療内科を受診してください。伝えていなかったとしても、その時点で必要な配慮を会社に相談することはできます。限界サイン7つも参考にしてみてください。
Q4. 短期離職の在職期間はどう説明すればいいですか?
病名に触れず、「体調を整えるために一度立ち止まった」という説明で十分です。第二新卒としての転職活動の進め方は第二新卒の転職活動の流れにまとめています。
まとめ|適応障害を転職先に言うかは、自分で決めていい
- 自分から申告する法律上の義務はない。ただし聞かれて嘘をつくのは別問題
- 傷病手当金の受給歴は、転職先に自動的には伝わらない
- 言わない選択をするなら、配慮を求めにくい分の備えを自分の中に持っておく
言うべきか、言わないべきか。正解は一つではないと思います。
わたしは言わない道を選び、10年経った今も、その選択を後悔していません。あなたが自分の状況に合った答えを選べますように。
ゆかり
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