退職を決めたその日から、頭の中はお金に対する不安でいっぱいです。
「次の仕事が決まるまで、生活できるのか」「失業保険はもらえるのか」——。わたしも、会社に行けなくなった翌日には、頭のどこかで考え始めていました。
結論から言うと、わたしは失業給付をもらえませんでした。入社9ヶ月で退職したため、受給資格を満たさなかったからです。
でも今、現職で雇用保険の実務を担当するようになってわかったことがあります。
あの時のわたしには、「特定理由離職者」として申請すれば受給できていた可能性がありました。
知らなかっただけで、損をしていた。今それを知った時、少しだけ悔しくなりました。
この記事では、同じ思いをしてほしくないという気持ちで、適応障害・人間関係・体調不良での退職と、失業給付の関係を整理します。
【前提】失業給付(基本手当)とは
まず用語を整理します。よく「失業保険」と呼ばれますが、正式には雇用保険の「基本手当」です。
- ハローワークで手続きが必要
- 在職中に雇用保険に加入していた人が対象
- 受給額は退職前の給与をもとに算出される
- 仕事を辞めた後、次の仕事が決まるまでの間に支給される
もらえる期間や金額は加入期間・年齢・離職理由によって変わります。まず「もらえるかどうか」の条件から見ていきましょう。
【結論】1年未満でも、もらえる場合がある
基本手当は「辞め方(離職理由)」によって、受給条件が変わります。
- 一般の自己都合退職:離職前2年間に12ヶ月以上
- 特定受給資格者(解雇・倒産など):離職前1年間に6ヶ月以上
- 特定理由離職者(病気・体調不良など):離職前1年間に6ヶ月以上
「特定理由離職者」に認定されれば、6ヶ月以上の加入で受給できます。
わたしの場合、9ヶ月加入していました。「一般の自己都合退職(12ヶ月以上必要)」として扱われていたら受給できませんが、「特定理由離職者」として申請していれば、受給できていた可能性がありました。
当時のわたしは、この制度を知りませんでした。
「特定理由離職者」とは——適応障害での退職は該当する?
特定理由離職者とは、簡単にいうと「自分の意思で辞めたけれど、やむを得ない事情があった人」のことです。
具体的には、以下のような事情が含まれます。
- 配偶者の転勤などに伴い離職した
- 妊娠・出産・育児などにより離職した
- 期間の定めのある雇用契約が更新されなかった(など)
- 体力の不足・心身の障害・疾病・負傷などにより離職した
適応障害や職場でのハラスメントによる体調不良での退職は、「心身の障害・疾病」として特定理由離職者に該当する可能性があります。
ポイントは、病名よりも「働けない状態だったかどうか」で判断される点です。診断書が必ずしも必要なわけではありませんが、離職票に記載された退職理由が「一身上の都合」だけだと、ハローワークで認定されにくい場合があります。
「離職票」の退職理由の書かれ方が鍵になる
会社が作成する離職票には、退職理由が記載されます。ここが「一身上の都合」だけでは、一般の自己都合退職として扱われてしまうことがあります。
退職時に「体調不良・医師の指導による退職」などの事情を会社の人事部に伝え、離職票にその旨を反映してもらうことが重要です。診断書を添えると、理由の説明がスムーズになります。
もし離職票の退職理由に納得がいかない場合は、ハローワークの窓口で異議を申し出ることができます。
特定理由離職者に認定されると、給付制限がなくなる
一般の自己都合退職では、受給開始まで2ヶ月の給付制限期間があります(2025年4月以降は1ヶ月に短縮)。
ところが特定理由離職者に認定されると、7日間の待機期間が終わった翌日から支給が始まります。この差は、精神的にも金銭的にも大きいです。
「あと1ヶ月だったのに…」を防ぐために
現在の仕事で雇用保険の手続きに関わるようになり、気づいたことがあります。
「加入11ヶ月で辞めてしまった」「あと1ヶ月待てば良かった」と後悔する人が、本当に多いのです。
もし今、退職を考えていて雇用保険の加入月数が気になる方は、今すぐ加入月数を確認してほしいと思います。
加入月数の確認方法
- 雇用保険被保険者証を確認する(入社時に会社から渡される)
- 会社の人事・総務に「雇用保険の加入月数を教えてほしい」と問い合わせる
- 最寄りのハローワークで「雇用保険被保険者資格取得確認通知書」を確認する
特定理由離職者の場合は6ヶ月、一般の自己都合退職なら12ヶ月が目安です。加入月数があと少し足りない場合は、有給消化の期間も被保険者期間に含まれるので、有給を使いながらタイミングを調整することも選択肢の一つです。
前職でも雇用保険に入っていたなら「通算」できる
雇用保険の被保険者期間は、条件を満たせば前の職場での加入期間と合算(通算)できます。
通算できる条件
- 前の職場でも雇用保険に加入していた
- 前職を辞めた際に、基本手当(失業給付)を受給していない
- 前職と現職の間に、雇用保険に加入していない期間が1年以内である
つまり、新卒で入った会社をすぐ辞めた場合でも、アルバイト時代や前々職で雇用保険に加入していた期間があれば、それが合算の対象になる場合があります。
ただし注意点として、前回の退職時に失業給付をすでに受け取っていると、その以前の期間はリセットされます。通算できるのは、前回の受給後に積み上げた期間のみです。
自分がどのくらいの期間を通算できるかは、ハローワークの窓口で確認するのが確実です。
傷病手当金との違い——混同しがちな2つの制度
「失業給付と傷病手当金って、どう違うの?」という質問をよく受けます。
- 失業給付(基本手当):雇用保険 / 退職後に申請 / 働ける状態であること が条件
- 傷病手当金:健康保険 / 在職中から申請可能 / 病気・けがで働けない状態 が条件
大事な点として、「働けない状態」では失業給付は受けられません。失業給付は「働ける状態にあるが、仕事がない」人が対象です。
退職後もまだ体調が回復していない場合は、まず傷病手当金を申請し、回復して就職活動ができる状態になってから失業給付に切り替える流れが一般的です。
傷病手当金を退職後も受け取るには「在職1年以上」が条件
傷病手当金は、在職中から申請すれば退職後も継続して受け取れます。ただし、退職後も継続受給するためには退職日時点で1年以上の健康保険加入期間が必要です。
わたしのように9ヶ月で退職した場合、この条件を満たしていないため退職後の継続受給はできません。ただし、在職中に休職している期間に申請すること自体は可能です。
体調を崩して休職しているうちに退職日が来てしまいそうな方は、退職前に傷病手当金の申請を始めることを検討してみてください。
退職後の1ヶ月、わたしはどう過ごしていたか
失業給付ももらえず、傷病手当金の継続受給条件も満たしていなかったわたしの退職後は、正直なところ、お金の面でかなり不安でした。
それでもどうにかなったのは、いくつかの事情があったからです。
- 実家暮らしだったため、固定費がほぼゼロだった
- 有給消化の1ヶ月分の給与が入ってきた(退職月の給与)
- 1ヶ月ほど休んでから転職活動を始め、比較的早く次が決まった
一人暮らしだったら、もっと追い詰められていたと思います。退職前に「自分はどの制度を使えるか」を把握しておくことが、退職後の心の余裕にもつながります。
よくある疑問Q&A
Q. ハローワークでの手続き、何を持っていけばいい?
離職票(会社から郵送されてきます)、雇用保険被保険者証、本人確認書類、写真、印鑑、通帳が基本セットです。特定理由離職者として申請したい場合は、退職理由を裏付けられる資料(診断書の写しなど)があると手続きがスムーズです。
Q. 会社が「一身上の都合」と書いていたら、どうすればいい?
ハローワークの窓口で「退職理由に異議あり」として申し出ることができます。離職票の離職理由に納得できない場合は、諦めずにハローワークに相談してください。担当者が事情を聞いて、実態に合った判断をしてくれます。
Q. 雇用保険に入っていなかったパートやアルバイトはどうなる?
週20時間以上・31日以上雇用見込みがある場合は、雇用保険に加入する義務があります。もし本来入るべき条件なのに加入させてもらえていなかった場合は、さかのぼって加入できるケースもあります。まずハローワークに相談してみてください。
まとめ|制度を知っているだけで、退職後の不安がかなり変わる
- 適応障害・体調不良での退職は「特定理由離職者」→ 6ヶ月以上の加入で受給できる可能性がある
- 給付制限なし・待機7日で受給開始(一般の自己都合退職より有利)
- 前職の加入期間も条件次第で通算できる
- 傷病手当金(健康保険)と失業給付(雇用保険)は別制度
- 離職票の退職理由に納得できなければ、ハローワークに異議申し出ができる
退職を考えている時、「お金のこと」は後回しにしがちです。でも、制度を知っているだけで、退職後の選択肢がぐっと広がります。
退職の手続き全体については、診断書をもらって退職した話にまとめています。合わせて読んでみてください。

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