「体が動かない。でも、休職と退職、どっちを選べばいいのかわからない」
適応障害と診断された時、多くの人がこの二択の前で立ち止まります。わたしもそうでした。
結果として、わたしは退職を選びました。でも今思うと、「休職」という選択肢をもっとちゃんと考えていたら、判断が変わっていたかもしれないと感じています。
この記事では、適応障害・メンタル不調を理由に退職を考えている方に向けて、休職と退職それぞれのメリット・デメリットと、どちらを選ぶべきかの判断基準を、体験と実務の両方の視点から整理します。
まず確認:休職と退職の基本的な違い
休職と退職は意味が違います。
- 休職:雇用関係を保ったまま、一定期間仕事を休む。籍は会社にある。
- 退職:雇用関係を終了する。会社との関係がすべて終わる。
大きな違いは「会社との関係が続くかどうか」です。この違いが、お金・保険・復職の可能性に大きく影響します。
休職を選ぶと何が変わるか
傷病手当金が受け取れる(最大1年6ヶ月)
休職中の最大のメリットは、傷病手当金です。健康保険から支給される給付金で、給与のおよそ3分の2が最長1年6ヶ月受け取れます。
収入がゼロにならないまま、回復に専念できる。これが休職の最大のメリットです。
社会保険・健康保険が継続される
在職中は会社が社会保険料の半分を負担しています。退職するとその補助がなくなり、国民健康保険・国民年金への切り替えが必要です。休職中はこの負担が続く(または一時的に免除される)ため、経済的なダメージが少なくて済みます。
「戻る選択肢」が残る
回復してみると「やっぱり仕事は続けたい」「転職よりも職場環境が改善すれば戻れる」と感じる人もいます。休職なら、復職という選択肢が残ります。退職してしまうと、この選択肢はなくなります。
退職を選ぶと何が変わるか
会社との関係が完全に終わる
「もう二度と行かなくていい」という安心感は、退職にしかありません。休職中も、会社と連絡を取り合う必要が生じることがあります(書類のやりとりや、復職面談など)。その精神的なコストが苦しい場合、退職が唯一の答えになることもあります。
わたしがそうでした。毎日のように揶揄されていた上司と、回復後にまた顔を合わせることが、どうしても想像できなかった。だから休職ではなく退職を選んだのだと、今は思います。
失業給付を申請できる(条件あり)
退職後は、雇用保険の「基本手当(失業給付)」が申請できます。ただし、受給には加入期間などの条件があります。適応障害での退職であれば「特定理由離職者」として申請することで、加入6ヶ月以上から受給できる可能性があります。
詳しくは失業給付と特定理由離職者について書いた記事をご覧ください。
傷病手当金の継続受給には「在職1年以上」が必要
退職後も傷病手当金を受け取り続けるためには、退職日時点で健康保険に1年以上加入していることが条件です。1年未満で退職した場合、退職後の継続受給はできません(在職中に申請した分はもらえます)。
どちらを選ぶべきか——判断の目安
「正解」は人それぞれですが、以下の基準を参考にしてみてください。
- まだ転職先を考える余力がなく、まずは休みたい
- 収入を完全にゼロにするのが不安(傷病手当金で乗り切りたい)
- 今の会社・職種自体は嫌いではない(特定の人間関係や状況が問題)
- 在職期間が1年未満で、傷病手当金の継続受給条件を満たしていない
- すでに転職・独立の意思が固まっている
- 休職制度がない(中小企業では制度がない場合もある)
- 職場・上司・環境そのものが原因で、戻ることが回復の妨げになる
- 休職中も会社と連絡を取ること自体がストレスになると予想できる
「職場環境が原因で体を壊した」場合、休職しても同じ環境に戻れば再発するリスクがあります。その場合は、退職という判断が心身の回復にとって正解になることも多いです。
わたしが「休職」を選ばなかった理由
正直に言うと、当時のわたしは「休職という制度を使えることを知らなかった」のが一番の理由でした。
入社9ヶ月で体が動かなくなり、心療内科で適応障害と診断されました。そのまま診断書を会社に提出して、退職に向けた話し合いが始まった。「休職できるか確認する」という発想が、そもそも頭にありませんでした。
知らなかっただけで、選べる選択肢が減っていた。
それでも、退職した結果としては「正解だった」と今は思っています。なぜなら、あの職場に戻ることは、当時のわたしには無理だったから。ただ、「知った上で選んだ」のと「知らずに選んだ」のでは、その後の後悔の重さが違います。
まず主治医に「休職が必要か」を相談する
休職か退職か迷ったら、まず心療内科・精神科の主治医に相談することをおすすめします。
医師は「今の状態で復職できるか」「どのくらいの休養が必要か」を判断する専門家です。「休職が必要です」という診断が出れば、それを会社に伝えるための診断書を書いてもらえます。
診断書があることで、会社も「病気による休職」として対応しやすくなります。診断書の取得から会社への提出の流れは、心療内科で診断書をもらって退職した話でも触れているので、参考にしてみてください。
会社の休職制度を確認する
就業規則に「休職」の項目があるか確認しましょう。規模の小さな会社では制度がないこともあります。ない場合は、退職か欠勤扱いかを選ぶことになります。
確認しにくい場合は、人事部・総務部に「休職の制度について教えてほしい」とだけ伝えるところから始められます。
どうしても会社と話せない場合は、退職代行を使う方法もある
「会社に電話すること自体が、もう無理」という状態なら、退職代行サービスを通じて退職の意思を伝えてもらうことができます。
退職代行は「逃げ」ではなく、今すぐ環境から離れるための現実的な手段です。女性向けのサービスもあります。詳しくはわたしNEXTのレビュー記事をどうぞ。
よくある疑問Q&A
Q. 休職中に転職活動をしてもいい?
就業規則によっては禁止されている場合があります。ただし、「次の仕事をゆっくり探す」という行動自体は多くの場合問題になりません。在職中の転職活動と同様に、秘密にしたまま進めることが基本です。
Q. 休職したら評価が下がる?
法律上、休職を理由にした不利益な扱いは禁止されています。ただし、現実には「復職しても居づらくなる」と感じる人もいます。それが不安な場合は、復職する気がなくても休職で時間を稼ぎながら転職活動を進める、という選択もあります。
Q. 適応障害と診断されたら、すぐに休職申請できる?
診断書が出た時点で、会社に休職を申し出ることができます。会社が「もう少し様子を見て」と言ってきた場合でも、診断書を出した時点でその判断は医師がしていることを伝えましょう。医師の指示に従う形で休職を主張するのが基本です。
Q. 「仕事に行けない」という状態が続いているが、診断がまだない
まず心療内科・精神科を受診することを強くおすすめします。「本当に病気なのか自信がない」という方でも、限界サインが出ているならそれが受診のサインです。診断がないと休職申請が難しくなります。
まとめ|「知らなかった」で選択肢を狭めないために
- 休職は「雇用を保ちながら休む」、退職は「雇用を終わらせる」
- 休職中は傷病手当金(給与の2/3・最長1年6ヶ月)が受け取れる
- 「職場そのものが原因」なら退職の方が回復に向いている場合もある
- 迷ったらまず主治医に相談して診断書をもらう
- どちらを選んでも、辞めた先にも次の場所はある
休職か退職か、どちらが「正しい」かは、その人の状況によって違います。でも、「知らなかった」という理由で選択肢を狭めてほしくありません。
まずは、どんな選択肢があるかを知ることから始めましょうね。

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